10-FEET

 「僕らは(スカジャンのテーマである)“愛”を説明するというよりも、ステージの上で自分たちが作るライブでお互いに熱をぶつけ合って、そこで“愛ってなんだろうね”ってね。ステージを降りた今やったら、恋愛の愛とか家族とか仲間とかって頭で考えて愛について話をしてしまうけど、ライブっていうあの状況で、言葉にしなくても伝わる“愛”があったと感じましたね」
 ライブを終えたTAKUMAの言葉である。その言葉の示す通り、なんて強烈に、なんて鮮烈に“愛”を感じさせるステージだったのだろうか、と今も胸を熱くさせる10-FEETの、2年ぶりのスカジャンのステージは彼らのSEとしてもはやファンなら誰もが知るドラゴンクエスト?の『そして伝説へ』と、テンションを一気に上昇させたオーディエンスの大歓声から始まった。1曲目は『Super stomper』。跳ねる重厚ビートが轟くと、ステージ前だけでなく後方の後方まで観客がジャンプしているのが見える。その様子にくしゃっと笑顔を見せたメンバーも煽られるように演奏の熱をあげていく。「どえらい楽しみにして来たんだ〜〜〜!!」とTAKUMAの声がこだまして『STONE COLD BREAK』のイントロが鳴り響くや、アグレッシヴに畳みかけるAメロ突入前にモッシュピットに辿り着けとばかりに観衆がなだれ込む。次々とダイブが起きるステージ前には飛び込まずにはいられないファンと盛り上げずにいられないファン。観客たちの誰もが動きを止めることなく心から踊りまくる!TAKUMAの合図でステージ前から後方へ向かってウェーブ、さらに後方から前方へと波を返すという匠の技の“一体感”を味わった10-FEETとオーディエンスは、そのまま『1sec』でもひとつの塊となって熱気を空へと放つ。マイクなしで「ありがとーーーっ!」と叫び、遠くまで飛ばした声で心と心の、愛と愛の交歓をした彼らは、今を精一杯楽しむという極上の愛を示しながら『RIVER』『2%』と続けていく。ライブバンドとしての小慣れたパフォーマンスを見せたりなんて絶対にしない彼ら。いつだって初期衝動と心から楽しむ姿を見せつけるからこそ、これだけのオーディエンスに愛され、求められているのだと感じる。TAKUMAとNAOKIとKOUICHIの3人が愛情いっぱいに鳴らす音のひとつひとつ、そして言葉のひと言ひと言から届く情熱と想い。きっとそれが彼らがステージから届けた“愛ってこういうもんだよな”ってことなのだ。「長崎ありがとう」とTAKUMAは何度、口にしただろう。ストレートに告げる想いの強さと飾らないからこその情熱を感じさせられ、ラストナンバー『goes on』へ。彼らの姿勢をそのままに綴ったような優しさと熱とを内包するアッパーでメロディックなロックナンバーは稲佐山と観客のハートを大きく揺さぶった。今年も長崎のファンと10-FEETの3人は最高の愛の交歓で愛し合ったね!

photo

photo

photo

photo

photo

photo

top ページのTOPへ
細美武士&矢野顕子

 今日、この日、12回目を数える長崎スカイジャンボリーにおいてこんな景色が見られたことがあっただろうか。ステージ前、そして斜面のてっぺんの位置にいる観客まで。全てのオーディエンスが地面に座り、ステージで奏でられる歌にじっと聴き耳を立てているのだ。the HIATUSの細美武士と日本が世界に誇るシンガーソングライターの矢野顕子という異色の2人によるユニットの歌を、蝉の声や風の音、地面から立ち上る熱を感じながらただただ聴き入っている。ロックのグルーヴに体を揺らし、汗にまみれ、砂を巻き上げながら音楽と混ざり合う、これまでに味わってきたスカジャンの“贅沢な音楽時間”とは全く違うベクトルで過ごす“贅沢な音楽時間”がそこにはあった。普段はドラムセットやアンプ、マイクスタンドや沢山の機材で埋められるステージ上には1台のグランドピアノとマイクスタンド、ギターアンプにイス。シンプルなセットが置かれ、2人のパフォーマンスを山肌へと届ける準備が整う。そこへ細美と矢野が盛大な拍手に迎えられてステージに現れた。「こういう感じでのライブだからさ、どうなるかわからなかったんだけど、すごくいい時間になったよね」と出番を終えた細美が口にしていたけれど、9000人が座って、ゆっくり音楽を楽しむというのもスカジャンの歴史に新たな風情とカラーを加えていく。最初の曲はシンディ・ローパーの『Time After Time』。切なさと共に人間の愛情の深さや人間味を宿す優しいナンバーを爪弾かれるギターの旋律とピアノの柔らかなメロディ、そして2人の歌声で響かせていくと、さきほどまでロックフェスそのものという熱で包まれていた稲佐山の空気が、ホールコンサートの会場と言ってもいいほどの静けさと温もりに塗り替えられていく。「すごいのんびりした雰囲気だから緊張しないかと思ったけど案外するものですね」と細美が笑うと「私は全然(緊張してない)♪」と矢野が返す。ライブの雰囲気同様にのんびりと、ふんわりとした会話に細美武士の新たな一面を感じ取ったファンも多かったのでは?2曲目ではWEEZERの『Say It Ain't So』が鳴りだす。地面から昇る熱は昼の喧騒の残り香のように沁みてきて、夏空は夕刻に近づきその色を少しずつ変えていく。自然を感じながら聴く歌声は会場の雰囲気をどんどん優しいものにしていくようだ。続いてthe HIATUSの『西門の昧爽』を矢野のピアノが紡いでいく。普段とは印象が違うのは楽曲もそうだけれど、2人の歌もそう。稲佐山のステージで、しかも野外で観客が座って鑑賞している、という特殊環境がそうさせるのか。柔和な歌声のハモニクスは新鮮に響く。矢野顕子節がふんだんに散りばめられた『Evacuation Plan』に続き、「タイトルのハートマークがカワイイでしょ♪」と笑顔の矢野と細美が2人で作った『やさぐれLOVE♥』で幕を閉じたこのスペシャルな時間はスカジャンに新たな色を生みだしたはず。スカジャン常連の細美が来年はどんなステージをするのか、楽しみになるパフォーマンスだった。

photo

photo

photo

top ページのTOPへ