BOOM BOOM SATELLITES

 並居るロックバンドの作った雰囲気を一気に変えたのは、昨年に続いての登場となったBOOM BOOM SATELLITES。いよいよ夜の闇が侵食を開始した稲佐山に姿を現した彼らは、ライブのドラマーに昨年とは違いyokoを迎えてのパフォーマンス。非常にタイトな彼女のドラムでライブの生々しさが増した気がした。
1曲目の『BACK ON MY FEET』から、会場の景色は一変。最初の一音だけで野外ロック・フェスは野外ダンス・パーティー会場へと姿を変えていた。空が暗くなってしまえば、もはや夜空という巨大な天井を持ったダンスフロアと化した稲佐山。彼らの音は大自然の静寂を裂き、川島道行のボーカルは歓声という音の塊をもスパッと切っていく。およそこれほどの圧倒的なパワー感のドラムを叩くとは思えない華奢なyokoから叩き出されるビートに、オーディエンスは夢中でステップを踏み、そんなステージ前の様子に煽られるように中野雅之のアクションも大きくなっていく。
  長崎の夜を包み込む重厚なエレクトロ音が『MORNING AFTER』の到来を教え、畳み掛けるビートに頭を振る中野同様にただただ観客たちも頭を振り乱して踊るのだった。山の上の方にいる人々までもがビートに乗って体を揺らしているのがシルエットとして見えている。そしてステージ前の観客はと言えば、照明に照らし出された影が荒ぶる海原のように見えるほど。踊らずにいられない。ステップを踏まずにいられない。ロック好き、テクノ好き、そのほかどんな音楽を好んでいようと関係ない。五感を根こそぎ奪われてしまうBOOM BOOM SATELLITESのパフォーマンスに潮の香りの混じる夜風も熱を含んでいく。
  続く『Moment I Count』が鳴ると煽動的な川島のシャウトにオーディエンスは大きく両手を挙げて応える。エレクトロながらもダイナミックなドラムによって生々しく響く音が会場の熱を上昇させたこのナンバーではギターにドラムにベース、それぞれの楽器が観客の身体に打ちつけられるような衝撃を覚えた。そして白熱のダンスワールドは『EASY ACTION』へ。ステージ前方まで飛び出した中野が踊る観客を見渡す。煽り、煽られるこの瞬間。意識が官能的でさえある楽曲によってひとつになっていく中、ライブはラストの『KICK IT OUT』へ。アタックの強いイントロによってテンションが一段、また一段と高まっていく。聴覚を奪う重厚な音が全身を廻っていく中、会場に湧き上がる地鳴りのような音がリズムを刻む全てのステージの音と重なって強大なビートに。砂塵が巻き起こり、目まぐるしく色を変える照明の乱反射を呼ぶ。交差する光の中で稲佐山ダンスホールの盛り上がりは最高潮を迎え、最後の瞬間に一気に弾けた。
 彼らが降りたステージは静寂を取り戻し、呼吸と共に鼓動を整える観客の頭上には細い月が昇っていた。月明かりが照らす大自然のダンスホール。もしかしたら月も踊っていたかも。そんな衝動と躍動に満ちたステージだった。

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BEAT CRUSADERS

 「稲佐山の皆様。そして奥様。大変おまんたせいたしマシーター!!」。3年連続の出演でついに大トリを任されたBEAT CRUSADERSがステージに姿を現すと、稲佐山に集まった全ての観客が総立ちで、大歓声と大きな拍手で迎える。長崎のオーディエンスに愛されるお面の男たちは笑顔(?)で手を振り、歓声に応えていく。「ワァ〜〜〜〜!」の歓声の中、ちらほら「あれ?」「ん?」「どうしたの?」の声が混じっているのが聞こえだす。その原因は車イスで登場したケイタイモにあった。SJの前に出演したイベントにて、盛り上がりすぎてステージから落下。盛りあがったがゆえの“迷誉(笑)の負傷”をしてしまったケイタイモに驚いた人も多かったよう。でも本人はいたっていつもと同じヤル気マンマン。
  さらに驚きを呼ぶヤル気を見せたのがカトウタロウだ。これまでのアンガス・ヤング(AC/DC)コスプレからエディ・ヴァン・ヘイレンの衣装にコスチューム・チェンジ!情熱の赤を思わせるアグレッシヴな衣装にもざわつく会場。もちろん本人が自信たっぷりにエディの動きもコピーしていたのを目撃した人も多かったのでは? そんな新鮮な驚きを呼んだビークルライブは『TIME FLIES,EVERYTHING GOES』からスタートした。軽快に叩き込まれるマシータのドラムにステージ前ではグルグルと輪になってモッシュするオーディエンス続出。ここで会った人たちと、たとえ初対面でも共に楽しもうという気持ちがそこには在った。
  カラフルなメロディが星の浮かぶ長崎の夜空に広がっていく『FEEL』に続き『E.M.O』で大きく波打つ観客の影。上へ上へ。大きな黒い塊となったオーディエンスの影のうねりはまるで海のよう。『CHINESE JET SET』ではそんな“海原”から伸びた手がひらひらと踊り出し、『BE MY WIFE』ではクラップが巻き起こる。観客の熱い反応に我慢できなくなったのか。ケイタイモがステージ前方へと飛び出してピョンピョン跳ねる姿も。「大丈夫なのか〜?」と心配の声は…と思うと、むしろ「イェ〜〜〜ッ!!」と喜びの声と共に盛り上がるオーディエンス(笑)。「新曲をやります。この曲は怒髪天がコーラスで参加しているので、CDもぜひ聴いてください」と響く新曲『LET IT GO』。さすが怒髪天が参加したというだけあって、ポップさに男気が滲むロック・チューンに会場はライブハウスさながらの熱気を見せる。
  そして本編のラストは『CUM ON FEEL THE NOIZE』。モッシュせずにはいられない。ダイブせずにもいられない!駆け巡るギターフレーズとパワフルに叩きつけられるマシータのドラム、そして歌うように響くクボタマサヒコのベースラインによって暴れまくる稲佐山がクライマックスを迎えたに見えた。そう。見えた。しかし!そこはさすがのビークル。稲佐山にもう1度“クライマックス”を届けたのだ。なんとアンコールでスベシャルなナンバーと、スペシャルなゲストを用意して。それはSJ前日に福岡でイベントに出演していたというWISEを迎えてのパフォーンマンスだ。TERIYAKI BOYZとしてもお馴染みのラッパーが、SJのステージにあがり、彼をフィーチャーした爽快かつ哀愁のある『Into the sky』でキレあるラップを聴かせた。観客を煽りまくったWISEがそのまま参加してアンコール2曲目『FOOL GROOVE』へ。心躍るパーティー・チューンでメンバーと共に踊るWISE。実はこの時、舞台袖でも集結した出演者やスタッフが一緒に体を揺らして踊っていた。SJに集う全ての人をひとつにして「あ〜。今年のSJも楽しかったな〜!」と笑顔でいっぱいにする。さすが大トリ!骨折なんてなんのその。みんなの笑顔で埋め尽くされた、そんなラストシーンだった。
  また来年。また来年。お客さん同士、出演者同士、そしてスタッフ。そこらじゅうで交わされたこの言葉こそ、どれほどこのSJが楽しく、そして愛すべきイベントであるかを物語っている気がする。きっとまたこのイベントが音楽を愛する人たちの集いの場となり、夏の思い出を刻んでくれるはず。そんな期待感がビークルのメロディと共に稲佐山に響き、Sky Jamboree 09は幕を閉じたのだった。

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