THE BACK HORN

 攻めのセットリストでSky Jamboreeに初登場となったTHE BACK HORNは1曲目に『無限の荒野』を持ってきて、スタートから稲佐山を埋めるオーディエンスのテンションを最高潮へと導く。Baの岡峰光舟が高々とベースを持ち上げて会場を煽り、Voの山田将司も鬼神の様相で渾身の歌声を鳴らす。Gtの菅波栄純は頭を振り、全身でギターを奏で、Drの松田晋二も軽快かつ重厚なリズムを叩き出す。ステージ上の4人が熱い歌を響かせると、観客も共に歌い、タイトル通りに歌が無限に、縦横無尽に広がっていくのを感じさせた。
  稲佐山の木立のようにびっしりと立ちあがり、ステージに向けられた拳の隙間に見えるTHE BACK HORNの4人の姿。そのシルエットが畳み掛ける次なる曲は『声』。タタタと快速のドラムが鼓動を逸らせる。切れ味抜群のギターがハートを掴み、リズミカルに躍動するベースのビートが身体を踊らせる。風を巻き起こす彼らによってSky Jamboreeの旗が揺れ、オーディエンスをも揺さぶる。彼らの歌が持つ“KYO-MEI”の力を、ここ長崎で見せつけることとなった攻めのセットリストは手を緩めることなく続き、3曲目には『罠』が鳴り響いた。
  内臓にまで響き渡るビートと全身全霊で鳴らされる山田の歌声によって観客が踏みしめるステップも激しさを増し、ステージ前の砂が空へと舞う。その熱に煽られて歌も空へと昇っていくようだ。「暑いですけど、まだまだ熱くいきましょう!」と松田が告げると、迫りくる熱を持った『サニー』のイントロが響き、大歓声が起きる。オーディエンスの手がステージへと伸ばされる。歌に宿る想いと共に、と。彼らの想いと共に、と。1フレーズに、呼吸に、鼓動に。心と心が共鳴を起こした瞬間、ステージの4人のパワーが増したような気がした。歌詞のひとことひとことが全身に打ち込まれていく感覚までも覚えるその様子は錯覚なのだろうか。それとも真実か。吠え声のごとく鳴らされる楽器の音が繰り出した『コバルトブルー』へとライブがなだれ込むと稲佐山の山肌に音がこだまする。山が震えるほどの音が咆哮となり、会場を凌駕すると、モッシュピットはダイブの嵐で応戦する。熱と熱のぶつかり合いは互角の戦いといったところ。そしてラストの『刃』では、突き進むパワーに満ちた音が駆け廻り、あちこちでのモッシュの輪を生みだす。つむじ風のような砂塵が何か所から発生し、砂のスモークの奥にTHE BACK HORNのシルエットが揺らぐ。そんな熱い熱い時間は菅波の雄叫びで幕を閉じたのだった。
  ステージを降りたメンバーは「ちょっと攻めすぎたかも」と苦笑い。暑い稲佐山に強力な熱風を吹き込むことでTHE BACK HORNの魂を刻みつけたのだから、これくらいの熱いセットリストも良かったんじゃないかと感じるけれど。未だかつてないほどの攻撃的なセットで稲佐山に呼吸の隙すら与えないのも、なかなか彼ららしいかもしれないと思った。

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仲井戸“CHABO”麗市

 音楽っていいな。音楽って素敵だな。きっと誰もがそう感じたと思う。それほどに音楽への、ロックンロールへの愛に溢れたステージで魅せたのは仲井戸CHABO麗市。ギターを弾きながら登場して「こんにちわー。レッド・ツェッペリンです。仲井戸です。2、3曲歌わせてくれ〜」と軽やかな挨拶をした彼を「わぁぁぁ〜」と歓声という音霊が迎える。
  ギター1本と仲井戸CHABO麗市の歌声だけのシンプルなスタイルだけれど、だからこそ届く素の彼自身がいる、そんなライブは『Sky Jamboreeのテーマ』から始まった。待ちわびていたという夏の日の、今日、この場所のためだけの歌は“この瞬間”の彼の気持ちを歌ったものだ。リフ1本の心地好さ。これぞロックンロールの味。飾るわけでもなく、うそぶくでもなく。まるで酒を酌み交わしながら「Sky Jamboreeってさ」と話しているかのような、今この瞬間の気持ちが歌になって歌に注がれていく。「ギター1本でもロックできるんだぞ」。その表情はまるでロック少年そのものの。笑顔はまぶしいほど。ロックンロールを愛する心はいつまでもロックと出会った瞬間の心のままなんだろうな。そんな彼の表情を見ていると自然とこちらにも笑みが浮かんでしまう。
  CHABO BANDでSJに出演したのが2006年のこと。その年以来、3年ぶりのSJ出演となった彼は「ご機嫌なバンドが沢山。そんな中、近所まで来たから歌わせてもらうよ。大好きなバンドの曲。記念に歌わせてくれ。ひとりで歌わせてくれ」とギターの音にのせて歌うように告げる。空が間近に迫る感覚のあるこの稲佐山で歌うのはRCサクセションの歌。「本当はこの歌、横でギター弾いてるだけの方が好きなんだけど、一生懸命歌うから聴いてくれ!」の言葉にステージ前でに観客が押し寄せる。
  音楽の神に愛された忌野清志郎が天に召されたのは今年5月2日のこと。そんな忌野清志郎にも聴こえるんじゃないかと思われるくらいに魂を込めて、想いを込めて。歌いだしたのは『スローバラード』。ステージ袖ではこの日の出演者たちがステージ前のオーディエンス同様、じっと聴き入っている。長く音楽に触れていて、その想いが熟成されていくということはないんだな、と感じた。だってここにいるどのアーティストもみんな、音楽に魅了され、音楽を愛し、いつだって少年の心のままに初期衝動を覚えて音を鳴らしている。そんな音楽を愛する男の姿がそこにあった。「サイコーの歌だー!昔、キヨシローくんと一緒に作った曲を聴いてくれー!」との言葉で軽快なイントロが響く。『雨上がりの夜空に』だ。大きなクラップが響き、共に歌う声もどんどん大きくなっていく。ステージの仲井戸CHABO麗市と会場のオーディエンス、さらにステージ袖の出演者たちと、SJのスタッフたち。この稲佐山にいる全ての人間が歌っていた。
  愛し合ってるかい?と空から声が降ってきそうなほどの熱唱はきっとあの人に届いたと信じたい。いや。信じている。だってこれだけの音楽への愛が、ここに集結していたののだから。
新たに呼吸をするたびに深まる音楽への想いを再確認させる、そんな時間だった。

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