ROCK'A'TRENCH

 生粋の晴れバンドがあっ晴れなパフォーマンスで稲佐山に太陽の熱を呼びこんだ。「実はこのバンドを組んでから今日この日まで、オレたち、ライブで雨に降られたこと1度もないんですよ」と楽屋で不敵な笑みを浮かべたVo&Gtの山森大輔をはじめとしたROCK'A'TRENCHのメンバーが、燦々と太陽が降り注ぐステージに登場するやオーディエンスはドドドーっと地鳴りをさせながらステージ前へと集結。歓声があっという間に大きな塊となって彼らを迎える中、鳴りだしたのは『Don't Stop The Music』。まさに青空にぴったりなグルーヴィーでファンキーな、彼ら自信の“パーティー・チューン”で2009年のSJは幕を開けた!軽快に躍動するビートに観客は軽やかにステップを踏みながら体を揺らし、タオルをまわして風を巻き起こす。Gtの豊田ヒロユキもBaの河原真もオーディエンスと同じく体を揺らして音を響かせる中、キーボードを弾く畠山拓也はステージ前方へと飛び出し、高くジャンプしながら観客を煽る。さらにDrのオータケハヤトまでドラムセットと一体となって飛び跳ねているように見えてしまうほどのアッパーなナンバーによって稲佐山が揺れているのを感じる。長崎初上陸の彼らなだけに、お客さんにもROCK'A'TRENCHを見るのが初めて!という人も多かったと思うけれど、この曲が鳴れば誰もが「あ!この曲は!!」と思ったはず、という『My SunShine』の歌いだしを山森が空へと飛ばすと後方で様子を見ていたお客さんも、入場したばかりのお客さんもステージ前へと続々移動。いつしかステージ前は超満員のオーディエンスが集結し、彼らと共に歌っていた。大合唱のその表情を満足気に見渡しながらメンバーもこぼれるほどの笑顔を見せている。幸せな場所。そんな言葉がピッタリの空間がそこに在った。「空とうちらのあいだに音楽しかないって感じだね。このままみんなで空まで昇ってしまおう!」と山森が告げると大きな歓声が共感の想いを届ける。彼の言葉通り、歌がぐんぐん空へと向かっていくみたいだ。そして最後の曲は『暁〜あかつき〜』。今日この日、どうしても長崎で歌いたかったという1曲はアルバム『ACTION』に収められた反戦の歌だった。「戦争で哀しい想いをするのは戦争を起こす人たちではなく、オレらのような普通の人。それを僕らが伝えていかないと」と言う山森は激戦の地・沖縄の出身。原爆の哀しみを知る長崎で、想いを込めて、熱くピースフルなメッセージソングを歌いあげ、聴き入る観客に優しくも熱を帯びた楔を打ち込んだのだった。
  「空にすぐ近い!本当にこんなに気持ちのいいライブしたことないよ!」と終演後の山森。最後の最後までイベントを楽しんでいたのも印象的だった。出演したアーティストをも虜にするSJ。またの出演に期待したい。

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lego big morl

 「lego big morlだーーーーーっ!!」。Vo&Gtのカナタタケヒロの絶叫が、稲佐山の空気を切り裂く。エッジの効いたキレ味抜群のギターの音が鳴り響くと、オーディエンスからも凄まじい歓声がステージへと返される。いきなりの熱と熱の応酬で始まったlego big morlのライブ。鋭さを持ったサウンドとは裏腹に、メロディアスなサビのハーモニーは気持ちいいくらいに伸びやかに会場へ広がっていく。
  サウスポーのBa・ヤマモトシンタロウとDrのアサカワヒロの叩きだす重厚なビートにジャキジャキとした質感のカナタとタナカヒロキのギターが絡み合い、オーディエンスの足を地面から遠ざける。熱いロック魂が会場の空気をグググっとlegoワールドへと引き寄せたまま、2曲目の『溢れる』のイントロが響く。音が洪水のように、それこそ“溢れだす”この曲ではオーディエンスから「Oi!Oi!Oi!」とコールも湧き上がり、昇るテンションは混ざり合いながら真っ青な空へと駆けていく。畳み掛けるようにギターが空間を裂いた前半から一転、静かに言葉を紡ぐようにはじまった『Ray』では、稲佐山を覆う森のざわめきと歌が重なるように広がっていくのが印象的だ。
  4人が紡ぐ音は切々と歌い上げられる想いとひとつになって色彩感豊かに響く。その音は稲佐山の豊かな緑と、遠くに見える海の深い青と、さらには頭上で澄みわたる青の美しさとを一層鮮やかにしていくようだ。じっと聴き入るオーディエンスへ、歌に刻まれたひとことひとことは沁みていったことだろう。「ほんまに綺麗なとこですね、ここは」とカナタが言い、自然に囲まれた美しい稲佐山をメンバーも眩しそうに見渡す。そしてこのlego big morlで、ほかのメンバーとはまた違う感慨を抱いているメンバーがいた。Drのアサカワだ。「いつか自分のバンドで、オレもこのステージに立ちたいと思っていた」という熊本出身の彼は、なんとかつて観客としてこの稲佐山にきたことがあるのだとか。11年というSJの歴史を感じさせるエピソードだ。
  ここで刺激を受け、音楽の素晴らしさを皮膚で感じた者が、その感動を伝えるべくステージへとやってくる。SJを育てるのは主催の人たちと観客、そして音楽なんだ、と改めて思う。そんなアサカワのカウントで『nice to』の爽快なメロディと柔らかなハーモニーが響いた。SJの一観客だった男は、こうしてSJを熱くさせる。アサカワと同じく、大きな夢を胸に抱いた観客もきっといたであろう会場で、彼は“夢が叶う瞬間”を見せてくれたのだった。

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